おたまじゃくしはカエルの子

元小学校教員の、徒然なる日々の記録

会うは別れの…

最近、私の働くフリースクールで一つの別れがあった。A君が遠方に引越すため、辞めることになったのだ。

 

彼は、不思議な魅力の持ち主だった。ウチに来ている子供の何人かは、玄関で靴を脱ぐなり

「A君来てる?」

と言う。過剰に人にサービスしたり、ゴマを擦ったりするわけではない。なのに、誰からも受け入れ、また受け入れられてしまう。そんな人だった。

そんな彼が辞めるとなったら、さぞ皆んなショックを受けるだろう、と思っていた。泣いてしまう子がいるかもしれない。

ところが意外だった。皆んな意外と、あっさりしているのだ。

「えーやめちゃうの?」

「もう来ないの?」

とちょっとびっくりはするものの、そのあとは普段通り。彼が最後に学校に来た日も、別れ際は

「ばいばーい」

といつものように声を掛け合って、それでサヨナラなのだ。

 

子供というのは前向きだなあ。常に未来を向いて、次の出会いを探しているのか。などと一人感心していた。

 

だが彼がいなくなって一ヶ月たって、彼と特に仲の良かった一人の男の子がぶつぶつとつぶやいていた。

「Aがいたらゲームのこと、色々聞けたんだけどなー」

私は

「メールとかズームとかで連絡してみればいいのに」

と、軽く返すと

「えーだってー連絡先、知らないもーん」

と言うではないか。

 

 

…そうか、きっと彼らは今まで毎日会っていた人と急に、会えなくなると言うことがどういうことかわからなかったのだ、と私はやっと気づいた。きっと、彼の頭の中ではA君が引っ越した後も学校に来ている像が浮かんでいたのだろう。例えどんなにもう会えないと、人から言われていたとしても。