おたまじゃくしはカエルの子

元小学校教員の、徒然なる日々の記録

カナダ、犬事情

有名なカナダ人ジョークで、

「バーベキューが好きで、犬を飼っているのがカナダ人」

というのがあるらしい。

 

確かに、カナダに行ってから犬を見る事がうんと増えた。日曜日の朝はよくランニングをしに公園に行っていたのだが、散歩をする人の3割から4割は犬連れだった。日本だと、「あれはチワワね」「あれはビーグルね」と見ただけで大体犬種がわかるが、カナダではそういう犬はあまりいなかった。耳と鼻だけブルドックなのに体は大型犬だったり、どういう犬同士がかけあわさったらこんな犬が出てきちゃうんだろう、という犬がたくさんいた。そして何より、洋服を着たりおしゃれをしている犬が、ほぼ、いない。きゃんきゃん吠える犬もあまりいなくて、日本に比べたら彼らはストレスのない犬社会を生きているような気がした。

 

私のいたホストファミリーの所に犬がやってきたのは、私が暮らし始めて1か月ほどたったある日だった。私が学校から帰ってくると、ホストファミリーがリビングに集まっている。どうしたどうした、と見てみると、生後8か月ほどの黒い子犬がいた。なんでもその日の朝、車で3~4時間ほどかけて、ブリーダーの元からやってきたらしい。

ホストファミリーはどこでその犬を飼うかで、真剣に議論をしていた。

「こんな小さなベイビーなんだから、家の中で飼わなきゃかわいそうよ」

というマザーと、

「この犬はドーベルマンの血が混じっているから、大人になったら体が大きくなって家の中じゃ飼えないよ」

というファザーと娘。結局は外で飼う、という事になって、玄関ポーチで飼われる事になった。

名前はルファス。聖書から取ったらしい。さすがクリスチャンだ。

 

ルファスはそれから玄関ポーチの犬小屋で、日々よく食べ、よく眠り、私達を見かけると尻尾をぶんぶんとふって、すくすくと成長していった。マザーは

 

「ルファース、マイベイビーベイビー」

とまるで0歳児のように溺愛していたが、2か月もすると体は立派な成犬になってしまった。犬小屋の前にひいてあったふわふわラグは、2日後にはルファスに噛まれてぼろぼろのぼろ布切れに変わり、散歩に連れ出そうとすれば、ファザーを引きずりそうな勢いでふぐふぐ言いながら走りだそうとする。さすがドーベルマンの血が混じっているだけあって、落ち着きがない。

 

さて、ある日マザーにリビングに呼ばれた。

「実は再来週から、私達は三人でクルージングの旅行に行くことにしたの。今年に入ってから三人で旅行に行けてなかったから。あなたたちの食事の支度なら心配しないで。教会で仲良くしている友達に来てもらう事にしたから。」

ふんふん、まあ、それはいいけど。ご飯も別にかまわない。(もうその頃にはマザーのご飯にあきあきしていた)ただ私には、気になることがあった。

「ルファスはどうするの?誰が面倒みるの?」

「それがまだ決まってないのよ。だれか、アルバイトで頼みたいんだけど」

私はつい、そこで言わなくてもいいことを言ってしまった。

「私が面倒みようか。実家でも犬飼ってたし」

「ほんとうに!!!」

マザーはハグせんばかりに喜んだ。そしてあっと言う間に私がルファスの面倒見係となってしまった。

 

彼らがクルージングで優雅な1週間を過ごしている間、私がどんな日々だったかは、また改めて書く事にしよう。