おたまじゃくしはカエルの子

元小学校教員の、徒然なる日々の記録

綿帽子

カナダで仲良くなった友人の一人に、イレアナという28歳の女性がいた。語学学校でESLを取っていた時に出会った女性なのだが、彼女はコロンビア出身で、カナディアンである現在の旦那さんと結婚して永住権を取るべく勉強していた。

 

イレアナの家に遊びに行かせてもらった事が何度かあるのだが、壁に結婚式の写真とその時手に持ったブーケがドライフラワーになって飾られていた。 私がつい見とれていると、その時のムービーの画像も見せてくれた。ウィディングドレス姿のイレアナは、旦那さんと手を取ってコロンビアのビートに合わせて華麗にダンスを踊っていた。日本のように、お雛様のように高砂にちょこんと座っている結婚式とは随分雰囲気が違う。でもせっかくドレスを着たのなら、ただ座っているだけでなくこれくらいのパフォーマンスがあったほうがインパクトがあるし、ドレスを着た価値がある気もする。

 

私が日本で待っている相方がいる、という話をすると、

「どんな結婚式を挙げたいの?」

と聞かれた。その時は結婚式を挙げるかどうかも正直考えていなかったのだが、白無垢を着てみたい、という漠然とした憧れはあったので、

「これがジャパニーズのウェディングだ」

と言って、スマホで日本の白無垢に綿帽子、という典型的な花嫁姿を見せた。すると彼女は

「ふ~~~ん」

という微妙な表情。確かにドレスとは雰囲気が全然違うし、キレイ、とは感じなかったのかな、と思っていると、

「なんか、この帽子、あれに似てる・・・・」

 

と言い出して何やらスマホで一生懸命検索しだした。数分後、

「そう、これよこれ!!!」

と得意げに見せたスマホに映っていたのは、

 

 

 

おにぎり

 

 

確かに、色といいカタチといい、綿帽子はおにぎりそっくりだ。

思わず私が噴き出すと、陽気なイレアナは、

「あなたは、オニギリハットをかぶって結婚するのね!!結婚したら絶対対写真を見せてね」

とけらけら笑っている。

 

モノの見方とは、こういう事を言うんだな、と身をもって感じた時間だった。

 

日本に帰ってから、結局挙げるかどうかも決めていなかった結婚式を挙げることになり、先日その打ち合わせに美容室にいった。当日の髪形をどうするか、美容師さんが

「かつらに綿帽子も素敵ですよ~」

と言って頭を試しにセットしてくれた。

 

かつらと綿帽子を被った鏡の中の私は、ただでさえ張っているえらがさらに協調され、頭にかぶった白い塊はもはやおにぎりにしか見えなかった。