おたまじゃくしはカエルの子

元小学校教員の、徒然なる日々の記録

文明の利器の不足

私の相方は、合理主義者である。

とにかく、無駄な事にお金を使う事を忌み嫌う。まだ付き合い始めて間もない頃、街を二人でそぞろ歩いている時、どこかカフェでも入りたいなーと思って

「ちょっとお腹空いたな~」

と言うと、

「あ、あそこにスーパーがある」

と相方が返してきた時は、意味がわからなかった。彼はスーパーに入るとお惣菜売り場にとことこ向かい、半額になっていたコロッケ二つ買った。・・・まあ確かに、お金のかからない合理的な選択ではある。

 

でも一番驚かされたのは、トイレットペーパー事件であろう。

お互いまだ一人暮らしをしていた頃、相方の部屋に遊びに行ってトイレを借りた時(ユニットバスタイプで恐ろしく汚いトイレだった)あるべきトイレットペーパーがなかった。私は困って、

「ねえ、トイレットペーパーは?」

と聞くと、相方はなんの悪びれた様子もなく

「あ~僕はトイレットペーパーは使わないんだ」

と言う。意味が分からず問いただすと、

「だって大きい方がしたくなる時は、いつも外を出歩いているから外でするもん。あーでも、ちゃんときれいにしてるよ。そこにあるペットボトルに水を入れて、お尻を洗うんだよ。インドではみんなやってるんだよ」

 

・・・・はああ??

 

とりあえず

「インドではやってるかもしれんが、ここは日本だから、日本式にしてくれ!」

と訴えてトイレットペーパーを買う約束をさせた。

 

カナダの語学学校には、色々なルーツを持つ先生達がいたのだが、その中にインドから来た先生がいた。これはチャンス、と思い、

「私のボーイフレンドが、ペットボトルでお尻を洗うのがインド式のトイレの仕方だと言っているのだが、ホントか?」

と聞いてみた。するとその女性の先生は苦笑いしながら

「う~んそれはうんと田舎の方だけの習慣ね」

と答えてくれた。

 

ほら、見ろ。今はインドだってちゃんと文明の利器を使ってトイレを使っているんじゃい!

 

とちょっと得意になって、相方に電話した記憶がある。

 

話は変わるが、昨今のコロナ騒動でマスクはおろか、トイレットペーパーやティッシュペーパーまで品薄である。最近はちょっと戻ってきたが、一時は全くどこにも売ってなかった。

なんでも、マスクが品薄になってきた時、トイレットペーパーの原料のパルプが不足するというデマが流れ、買い占めが進んだとか。

 

たかだかお尻を拭くためだけのモノが手に入らないだけで、こんなに不安になるなんて。我々は、なんて弱い生き物なんだろう。

 

トイレットペーパーを手に入れるために東奔西走するくらいなら、ペットボトルでお尻を洗った方がかっこいいのかもしれない。