おたまじゃくしはカエルの子

元小学校教員の、徒然なる日々の記録

野田知佑さんと川の学校の事

野田知佑さんが亡くなった。

 

 

初めて野田さんの事を知ったのは、今からもう10年近く前だと思う。池袋の書店で、野田さんの著書『川の学校』を見つけたのだ。野田さんが主体となって続けている、小、中学生を対象としたアクティビティの様子を綴った本だ。

 

『川の学校』とは、一言で言えば川で楽しく遊ぶことのできる「川ガキ」を育てる場所だ。川で楽しく遊ぶ、と一言で言うとなんだそれだけか、と思われそうだが、そこには色々な要素が含まれる。刻々と変わっていく自然の状況を判断し、道具の使い方を覚え、どんな事ができるか、できないか常に考える・・・。誰かになにかを命令されたり指示される事ほぼないし、ルールも禁止事項もない。実に自由な学校だ。

 

当時私は、教員になって2年目。子供に毎日指示を出し、言う事を聞かなければ叱りつけていた。良い教員とは何か、という問いに対して学校側の返答は「子供にちゃんと言うことを聞かせられる人」なんだと知ったのはこの頃だ。(もちろんそんなダイレクトな言葉では言わないが)その事にモヤモヤはしていたが、じゃあそれに対する明確な反論があるかとい言われれば、はっきりとは言えない。自己主張があるようで、ない。なんとも中途半端な時にこの本を手に取った。

一言で言ってしまえば、なんて眩しい世界なんだろうと思った。自分の置かれている世界とは対局の世界だった。その頃から学校では「主体的に考える力を育てる」必要性を説かれるようになっていたが、川の学校のような自由な空間で初めて育つものだと感じた。一度でいいから行ってみたい、と強く思った。

 

それから何年か過ぎてしまった。小学校で先生をしながらも、時々川の学校の事を考えていた。でも、だんだん川の学校に行くにはあまりに障害が多すぎて、8割型諦めていた。

病気になって、手術もした。そこで初めて本気になって川の学校の事を考えた。

 

生きていて、元気で、交通費もあるのに、なぜ行かないんだろう。

 

そこで初めて川の学校に行くことを決意した。

 

 

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川の学校