おたまじゃくしはカエルの子

元小学校教員の、徒然なる日々の記録

飛行機の乗り方

 私が前回、海外へ向かう飛行機に乗ったのは、大学の卒業旅行の時だから、かれこれもう10年前。行先はイタリアだったけど、友達に誘われて何となく決めたパッケージツアー。自分でホテルを決めたり航空券を取ったりする事もなく、食事するのも観光するのも全部旅行会社の御膳立て。今から考えればなんともラクで味気のない旅だった。

 

 今回の留学は、手続きや学校の選定に留学サポートの会社に入ってもらったが、航空券の手配は自分でしなければならなかった。

 航空券、どうやってとるんだろう?でも高速バスのチケットはネットで取れるから、同じだろう。

 Googleに「バンクーバー、航空券」と入れてみると、ずらーっと旅行会社の名前が並び、試しに一つを開いてみる。「格安航空券!」という元気のいいコピーと共に現れたのは、36000円のチケット。サーチャージを入れても50000円くらいだった。へー、今はこんなに安く海外に行けるのか。地球は小さくなったもんだ。見れば、残り10枚という如何にもお急ぎ下さいというような文字が点滅している。早速、クレジットカードの番号を入力し予約完了。なーんだ、簡単じゃーん。この時はそう思った。

 

 航空券の情報を留学の会社にメールすると、そこの担当のOさんが連絡をくれた。

「飛行機のチケットのメール、見させていただきました。最初の乗り換えの時間、ちょっと短いですね…」

そういえば、バンクーバーに行くまでに乗り換えが2回あった。

「え?そうですか??」

「はい、最初アメリカのポートランドで乗り換えですが、その間が55分しかないですね。この間に税関を通ったり、荷物チェックをするので、結構ギリギリですよ」


えーーー


その時点で頭がフリーズする。飛行機を乗り換えるということを、(前回やっていたのにも関わらず)かるーく考えていたのだ。しかも、私は方向音痴で、一年の半分は道を間違えてうろうろする人間だ。

「ええええ~~もし間に合わなかったら、乗れないって事ですよね。」

「うーーん、その可能性が高いですね~」

なんで予約を入れる前に、よく見なかったんだ!!と自分への突っ込みを入れる私に、心優しいOさんが遠慮がちに行った。

「え~と、なんで直行便にしなかったんですか?」

 

 後悔、先には立たない。飛行機に乗り遅れて、茫然とする自分の姿を思い浮かべつつ、大学の卒業旅行で使ったトランクを引っ張りだして荷物を詰め始めた。このトランクは、いつか留学に行く事もあろうと、大きな物を買ったのだ。着替えや日用品、現地では手に入りにくいであろう、今使っている化粧水のボトルやコンタクトケア用品、日本語の参考書を詰めていくと間もなくトランクはパンパンになった。

 荷物を詰めながら、留学の会社から渡された「出発までに」という遠足のしおりのような冊子を見る。そこには荷物の事から、空港でやらなければならない事が丁寧に書かれていた。その時、ふと気が付く。そこに書かれてる事のほとんどすべてを前回の卒業旅行でやった記憶がないのだ。荷物を受け取るベルトコンベアで、自分のトランクを受け取ったような記憶はあるが、税関での取り調べやら、ボディチェックやら、やったはずなのにまるで記憶がない。自分で計画も立ててないし、なんとなくでついて行っただけだからであろう。あの当時の自分の主体性のなさにはあきれるばかりである。

 

 出発の日はあっという間にやってきた。一緒に住む相方が駅まで送ってくれた。トランクを玄関まで下ろそうとすると、荷物は減らしたはずなのにかなり重い。

「うーん重いね~。これ、重量制限にひっかかるよ」

「え?何それ!!そんなのあるの?」

「あるに決まってんじゃん。昔はいい加減に測ってくれたから、多少は大丈夫だったけど、今は駄目じゃないかな」

 

早く言ってよ~

 

口まで出かかったがもう遅い。荷物の重量、乗り継ぎ、さらには、成田に向かう電車の中で飛行機の予約表をいれたファイルが手荷物の中に入ってないと大騒ぎして、(トランクに間違えて入れただけだったが)もうさっきまでのセンチメンタルな気持ちなど吹っ飛んだ。もはや留学が不安とかホームシックが怖いとかではなく、カナダに着けるか否かという切実な問題で頭がいっぱいである。

 

という所まで書いて、続きはまた後日。